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Kayfabermetrics -WWEの選手評価を科学する-

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WWEネットワーク開始まであと僅かということで、いつもとは趣向を変えて、

WWE関連の少しマニアックな記事を紹介しようと思います。シュウカツしたくない。

 

今回紹介するのはKayfabermetricsというサイトです。

野球好きの方なら字面でピンと来るかも知れませんが、

同サイトはSabermetrics(ブラピ主演の映画『マネー・ボール』のアレです)を捩ったもので、

WWEの各選手の戦績を統計学的見地から分析して選手の評価を客観的に導くという中々にボンクラで挑戦的な試みをしています。

 

 

 

元ネタのSabermetricsは選手の獲得の参考にされたり、

戦略の組み立てに利用されたりするそうです。

 

一方でKayfabermetricsはその名が示す通り「ケーフェイ」上での

選手の評価を客観的に割り出そうという趣旨のもとに導かれた分析手法となっています。

 

つまり、Kayfabermetricsを利用すれば各選手の戦績と試合内容を元に

WWEという団体が各選手をどの程度評価しているかを一目で把握出来るということです。

 

同サイトでは選手の総合評価をPush Index Number(PIN)という指標で表しています。

MLBではWAR、NBAではPERがこれに当たります。

ちなみに、このPushという概念は海外プロレスファンの間では超重要・頻出単語となりつつあります。意味合いは日本語で使用されるそれとほとんど差異はありません。

 

元々はIWC(インターネット・レスリング・コミュニティ)の少しマニアなファン層が、自分が贔屓にしている選手が出番を与えらないことを愚痴る際に使用される単語だったのですが、最近では、圧倒的なファン人気を誇るダニエル・ブライアンが会社の意向によりPushされないために「YES!」コールが同選手に関係のない試合で起こる等、一般ファンにも確実に広まりつつある概念であると指摘されています。(この辺については改めて記事一本丸々使って書きたいです)

 

それでは、このKayfabermetricsから割り出された

2013年に最も会社からプッシュされた10選手(46選手中)』を御覧下さい。

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………はい。なんのこっちゃ分からないですね。

 

5位くらいまでは納得の結果ですが、8位から10位までがどう見ても怪しいですよね。

 

年末にかけてプッシュされてIC王座を獲得したビッグ E. ラングストンが9位にランクインするのは

まだ分かるとしても、ワイアット・ファミリーのルーク・ハーパーが8位…?

それでいて肝心の親玉のブレイ・ワイアットは25位だったりします。

 

しかもよく分からない数字とアルファベットが並んでいて、文系の方なんかは即ブラウザバックしたくなること請け合いですが、一つ一つの指標を丁寧に見ていくと中々よく考えられていて面白いのです。 

 

Match Win Loss Win% (M,W,L,W%)

Mはシングルの試合数、Wは白星の数、Lは黒星の数、W%は勝率です。

(ハウス・ショーはMに含まれず。DQ勝利はWに含む。無効試合はWにもLにも含まれず。W%は有効試合の数から導かれる。)

 

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 W%でソートすると、ハゲタカおじさんが一転攻勢で一位に!

  

Push Point(PP)

この指標では、試合の勝利数に応じてポイントが加算されます。

また、各番組の重要度に応じてポイントが異なってきます。

 

獲得ポイント数は以下の通りです。読むのが面倒でしたら多少は飛ばしても大丈夫です。

 

・WrestleMania – (2)

・A級PPV Royal Rumble, SummerSlam, Survivor Series (1.75)

・その他B級のPPV (1.5)

・Raw – (1)

Smackdown! – (0.8)

・Main Event – (0.7)

・Superstars – (0.5)

・Saturday Morning Slam – (0.5)

 

ボーナスPP

WWE Championship Match – (1)

・World Heavyweight Championship Match – (0.8)

・Intercontinental Championship Match – (0.7)

・United States Championship Match – (0.5)

・Tag-Team Championship Match – (0.5)

 

(注意:DQもしくは場外カウントアウト決着の場合にはポイントは半分になる。 例:ウェイド・バレットがRAWでIC王座戦DQ勝利する  = (IC王座戦に勝利したため0.7、RAWで勝利したため1.0– 合計ポイントは1.7。DQ勝利のため、加算ポイントは半分の0.85)

 

スペシャル・プッシュ・ボーナス

・Royal Rumbleで優勝する – (2.75)

・Elimination Chamberで勝利する – (2)

・Money in the Bank獲得 – (2)

  

ざっくり言えば、

レッスルマニア>A級PPV>B級PPV>RAW>SM>その他

王座戦や特殊試合がボーナス・ポイントとして加算される感じですね。

 

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2013年に長期政権を築いたデル・リオとカーティス・アクセルが1位と4位にランクインしているのが分かります。

 

Bury Point (BP)

勝敗に関わらず試合の長さに応じてポイントが加算されます。

BuryというのはPushの反対語で、選手の実力やファンの支持に反して会社の意向や政治によって

正当な扱いを受けられていないという状態を示します。

 

・0:00 – 3:00 (-1.5)

・3:01 – 8:00  (-1.0)

・8:01 – 15:00 (-0.5)

・15:01 – 20:00 – (0)

・20:01 – and up (+0.5)

王座戦で敗れた選手には無条件で(+0.5)

もし試合が15分以下で場外カウントアウトもしくはDQ負けで勝負が決した場合には無条件で(-0.5)。もし試合が15分以上の場合は(0)。

 

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指標の性質上、試合数の少ない選手が必然的に上位に食い込んできます。

下位の選手を見た方が分かりやすいかも知れません。

  

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Push/Bury/Differential (P/B/D)

この指標はPPとBPの合計を表したものです。

当初はこの指標が最終評価指標になる予定だったそうです。

 

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なるほど、この時点の順位でもそれっぽく見えます

また、BPはあくまでもPPの補助的な指標だということが分かります。

  

Legacy Push Points  (LPP)

これは選手のキャリアにおけるLegacyつまりタイトル獲得歴などに応じて

ポイントが加算される指標です。相続ポイントと捉えてもらえればいいと思います。

 後々説明する指標に大きく影響してきます。

  

WWE世界ヘビー級王座 – (1.2)

・Royal Rumble優勝 – (1)

・Money in the Bank獲得 – (1)

・世界ヘビー級王座(WHC)– (.8)

・IC – (.7)

・US – (.5)

・Tag Team – (.25)

 

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唯一この指標の欠点を指摘するならば、王座保持の期間が指標に反映されないことです。

例えば、CM Punkは2012年から2013年にかけて一年以上WWE王座を保持しましたが、

指標上の扱いでは1.2です。また、オートンとシナが2011年に短期間でベルトの獲ったり

獲られたりを繰り返したことも考えると、まだ改良の余地がある指標であることが分かります。

  

Velocity (VEL)

ここから少し特殊な概念が登場してきます。

VELはVelocityつまりPPVに向けて各選手が得た「勢い」を表す指標です。

VELは以下の式によって導かれます。

 

VEL = ppvP/B/D×2+調整値

 

つまり、各PPVの間のRAWやSMで得られたP/B/Dに調整値を加えて

各選手の「勢い」を導くわけです。各PPVの後に毎回数値はリセットされます。

調整値は以下の通りです。

 

1. 保持している王座に応じたポイント

WWEヘビー or 世界ヘビー Title + 5

・IC 王座 +3

・ TAG TEAM 王座 +2

・US 王座 + 2

・Money in the Bank 保持者 + 2

 

2. 直前のPPVの試合順に応じたポイント。Pre-Showを第一試合として数えて以下のように加算される。ただし、女子の試合は除く。

 

・第1試合 – .5

・第2試合 – 1

・第3試合 – 1.5

・第4試合 – 2

・第5試合 – 2.5

・第6試合 – 3

・Etc…

 

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表は2013年最後の月の勢いを表しています。

ラングストンが年末にかけて勢いがあったことが、総合評価指標に大きく影響を与えてきます。

  

Test of Strength (TOS)

この指標は各選手が年間を通して試合をした「相手の評価」の平均値を割り出したものです。

つまり、この指標が高いほど大物との試合を組まれているということになります。

 

 相手の評価は

uPIN = (P/B/D + LPP + VEL)

により導かれます。

 

uPINは最終的な総合評価指標PINの(仮)のものと考えて下さい。

 

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 そして、このuPINを年間の総試合数で割ります。(uPIN/Match)

 

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トップ10にシールドのメンバー全員がランクインしているのが分かります。

 

ここでルーク・ハーパーが圧倒的な数値を叩き出しているのは、彼が2013年に組まれた数少ない

シングル戦の対戦相手がCMパンクやダニエル・ブライアンだったからです。

しかも、どれもCMを挟む様なある程度長い試合でした。

ハーパーは実は早いうちからそのレスリング技術を買われていたのです。

 

一方で、本命のブレイ・ワイアットは2014年のロイヤル・ランブルまで大物とまともな

シングル戦を組まれていなかったりします。その為、ギミックを評価されてはいたものの、

リング上での実力が明らかになったのはごく最近になってからなのです。

 

 

Push Index Number (PIN)

そして

 

PIN = uPIN(P/B/D+LPP+VEL)+TOS

 

により、総合評価指標のPINが導かれることになります。

 

それではもう一度最初のPIN指標でソートした表をuPINの表と見比べてみましょう。

 

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6位から10位までがガラッと入れ替わっているのが分かります。

年間の対戦相手の格を考慮に入れることで、現在の選手評価が補正されるということですね。

 

だいぶ表の見え方が変わってきたのではないでしょうか。

 

あとはKayfabermetricsの本サイトで色々ソートしてニヤニヤして下さい!