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#YesMovement ダニエル・ブライアンの新Tシャツに込められた意味を深読みする

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この一年間でWWEにおいてNo.1ベビー・フェイスとしての地位を確固たるものとした

ヤギ男ことダニエル・ブライアン。

 

これまでも一風変わったデザインが起用されていた彼のTシャツですが、

彼の新Tシャツのデザインがなんともサブカル臭いとファンの間では話題になっています。

 

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少し海外の若者文化に興味のある方であれば、ピンとくるデザインでしょう。

このTシャツには二つの元ネタがあります。

 

 

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 その一つは言わずと知れた革命家のチェ・ゲバラ

こちらはパロディTシャツの定番として割と使い古されたネタだったりします。

 

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 そしてもう一つの元ネタがこのOBEYです。

 

 今日はこのOBEYというデザインを解説しつつ、それがダニエル・ブライアンの

#YesMovementにどう関連してくるかを深読みしていきたいと思います。

 

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 最近ではプリントTシャツでも見かけるようになったOBEYですが、元々は「グラフィティ」というストリート・アートの一種として誕生しました。グラフィティというと街で見かける妙に凝ったスプレー落書きというイメージが強いかも知れませんが、OBEYはステッカーを利用したグラフィティの先駆けとも言われています。OBEYのステッカーは80年代末期からスケーター・コミュニティを中心に爆発的にアメリカ全土に広まり、どの街でも電柱やポストなどの公共物に貼られている定番のステッカーとなりました。

 

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 そして何の因果か、このデザインの元となったのが人間山脈アンドレ・ザ・ジャイアントなのです。デザインを考案したシェパード・フェアリー曰く、アンドレを使用したのはステンシルの作り方を友達に教えていた際に、たまたま新聞記事でプロレス興行の広告を見かけたからだということです。

 

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 実はこの人、2008年の大統領選時にアメリカ全土を埋め尽くしたオバマHOPEポスターの

デザインも手掛けた超有名グラフィティ・アーティストだったりします。 

 

グラフィティ及び現代アートをテーマにした傑作ドキュメンタリー映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』中のインタビューによれば、彼はOBEYに関してこう語っています。

Even though Andre the Giant was just an inside joke and I was having fun, (but) I liked the idea of “more stickers that are out there, the more important it seems, the more people want to know what it is, where they ask each other”. And it gains real power from perceived power”.

 

アンドレ・ザ・ジャイアントのステッカーも最初はちょっとした内輪ネタで、それはそれで楽しかったんだ。でも、それ以上に『ステッカーがより多く世に出回れば出回るほど、より深い意味を持つものの様に見えてきて、より多くの人がその意味を知ろうとして話し合う』という現象、つまり元々は特に意味や根拠を持たないものが、目に見える力を手に入れていく過程が面白いなと思った。 

 

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 実はダニエル・ブライアンのYESチャントも本人と団体が意図しない形で広まっていきました。

 

 ブライアン本人はYESチャントの起源についてこう語っています。

“It was originally a take-off of UFC fighter Diego Sanchez because he was all about positivity and would just chant “Yes! Yes!” I always loved that and it was just something I started doing when I won the World Heavyweight Championship. I was very excited and I just started doing it. Then it just started to catch on. I remember the first time I noticed, we had done a RAW in Seattle and people were chanting “Yes!” and I thought it was because I was from Washington State but then it erupted at WrestleMania 28. It just happened organically.”

 

元々はUFCファイターのディエゴ・サンチェズが入場時に”Yes!Yes!”と自分を鼓舞する様を真似したものだったんだ。ずっとそれが気に入っていて、(マネー・イン・ザ・バンクの権利を行使して)世界ヘビー級王座を獲得した時に初めてYESサインを上げたんだ。本当に興奮していて身体が自然と動いてた。それが観客席に感染したんだ。初めてYESチャントが起こっているのに気付いたのはRAWのシアトル大会の時だった。その時はシアトルが自分の故郷だということもあって起こっていたものだと思っていたんだけど、レッスルマニア28でそれがただの偶然じゃないことが分かった。だから、極めて自然に発生したものだったんだよ。 

 

引用:

Daniel Bryan Speaks On His Beard, Origins Of Yes/No Chants, SummerSlam

 

#YesMovementの勢いは止まることを知らず、最近では団体の意向も超越するような動きを見せることがあります。ブライアンの試合中以外でも沸き起こるYESチャント。しかし、それは同時に観客の行き過ぎた悪ノリとしても捉えることが出来ます。命を懸けてリング上で試合をしている選手はその時何を感じるでしょう。自分とは関係の無い選手のチャントが起こる中で試合をするのは決して良い気分はしないはずです。

 

この「伝染性」と「悪ノリ」という部分にこそOBEYとYESのシンクロするポイントがあります。 

 

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 グラフィティは基本的に第三者から見れば落書きであるため、許可がない場合は公共物や私有財産の器物破損に当たります。また、人によってはグラフィティは景観を損なう好ましくないものでしょう。つまり、グラフィティは常にヴァンダリズム(公共物破壊)という性質を孕んでいるのです。 

 

YESチャントも同様に時としてブライアンに関係の無い試合の質や盛り上がりを損ないます。このチャントのキャッチーさが生む稀有な「伝染性」は時として悪い方向に作用するわけです。団体がダニエル・ブライアンというキャラクターの扱いに手を焼いているのも容易に想像出来ます。

 

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このTシャツのおまけとして特製の#YesMovementステッカーを配布している

ことからも、WWEがOBEYという元ネタ、ひいてはグラフィティという文化を

強く意識しているのは間違いないと言えます。

 

そう考えるブライアンのTシャツにOBEYのパロディ・デザインを起用したこと自体がWWEの盛大な自虐ネタであるのではないかという気さえしてきます。

 

スターとしての華と素質を持ち合わせたシナとオートンをプッシュし、バティスタという

過去のスーパースターを呼び戻しレッスルマニアのメインイベントに据えようとする

団体に対して、半ばヴァンダリズム的に反抗の意志を見せるWWEユニバース。

 

その構図まで上手くグッズに取り込もうとするWWEの商売魂とセンスには

本当に舌を巻くしかありません。

 

 

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